研究計画(現在の関心や実施したい研究内容)

 私は現在、人の行動と環境の関わりに強い関心がある。人がどのように環境に作用され、また、環境がいかに人に作用されていくのか、そして、同様に個人だけではなく、個人が及ぼす集団への影響、集団が及ぼす個人への影響にも 同義ではあるが関心がある。
 これは、私自身が社会人時代に経験した、会社や企業といった多くの組織の中で、個人が活動するときに有意義に働けていない現状があるのではないか、という問題意識が発端でもある。
 「働く」というのは決して楽なものではなく、つらいこともあるが、本来なら楽しんで行えるべきものであると考える。そして、その辛い状態でも我慢して「働く」ことを「責任感」「使命感」と言葉を変えれば聞こえは良いが、決して有意義に働くことが出来ていない人が多いのではないか。
 そこで、私は「様々な組織の中で活動する個人のQOLの向上」を目的として研究を進めていきたい。
 人間関係に関わること、及び、それぞれの個人間で行われる言語行動や、その他の表現行動から発生する人間関係や行動の変化も多種多様である。個人の集まりが集団であり、また社会となる。個人それぞれが自立しなければ社会が自立することはできない。それは、社会を構成している個人が互いに援助し合うのではなく依存し合っている段階では、個人のQOLの向上にはならないと考えるからである。そのため、互いに個人が協力し合い、互いに援助し合うことによってそれは達成できると考える。
 そして、その研究方法として組織行動マネジメントを学び、実践を行っていく。組織行動マネジメントは組織の問題を効果的にかつ効率的に解決する行動的テクノロジーの開発を目的としている(島宗,1999)、その行動的テクノロジーの開発を行っていくことも上記の目的を達成することができるものと考える。
 そもそも、個人のQOLは一過性のものではなく、継続して維持されうるものである考える。そんな中、どのようにすれば、人がより有意義に過ごすことができるのであろうか。個人がそれぞれのQOLを追求することを前提とし、その中で、社会集団がどれほどまで受容することができ、さらに個人の行動が集団の外にある環境に働きかけることができるのかまでを研究対象としたい。
 また、研究対象の焦点は個人の行動であり、そこからどれ程度集団にアプローチすることが出来るのか。個人がそれぞれの個人として社会を歩んでいくためにどの程度、心理学が貢献することができるのか、それを応用行動分析の立場から追究したい。そのため、援助活動はもとより、援護活動をどれほどまで行っていけるのかも考えたい。
 また、心理学者として歩んでいく上で「なぜ、ある事象が起こるのか」を実証していくことは一つの責務ではある。しかし、それだけではなく「どうしたら行動を成立させることが出来るのか」を第一の問いかけとして追究していきたい。

引用文献
 島宗 理 1999 組織行動マネジメントの歴史と現状とこれからの課題 行動分析学研究,14,2-12.