【レポート】デジタル化以前に考えなければならないこと −人文科学は何に基づいて研究するのか−

【講師】
明星 聖子 (埼玉大学):準教授 

【要 旨】
明星聖子「デジタル化以前に考えなければならないこと −人文科学は何に基づいて研究するのか−」
 人文科学研究資料のデジタル化という問題が、よく議論されています。私の研究も、その動向の一翼を担うものとして世間的には理解されているかと思います。たしかにそうなのですが、しかし、そこでの議論の中心的な流れと、最近の私の探求の方向性は、ある意味逆になってしまったのではないか、と自分では感じています。なるほど、少し前までは私も、全集としてのデジタルアーカイブあるいはインターネットを利用したコラボレーションシステムといった大がかりな構築に関わる言葉を口にしていました。ところが、本当に自分がほしいデジタルのデータとはどういうものか、それを繰り返し掘り下げ、そもそもこの問題に関わり始めた動機は何かという原点に立ち戻って問い直したとき、本来私が取り組むべき課題の地平がようやく見えてきたのです。それは一見、デジタルやコンピュータとはまったく縁のない事柄が並ぶ世界です。しかし、そこにしっかり身を置いて、自らの研究手法を見直し、自らの本当のニーズを吟味し始めてやっと、少なくとも自分の研究に役立つシンプルな小さなツールを、いま設計・開発できているのも事実です。その地平とは何か−。今回のセミナーでは、トライ・アンド・エラーだらけの私のこれまでの道のりを紹介しながら、現段階で、文学研究者として自分なりにこの問題へどう寄与していくかについて考えているところを、お伝えできればと思います。


【レジュメ以外の記録】
カフカの資料はトランク1個と考えられる。
.その資料を持っている人が亡命時にトランク1個に入れたといわれている
.それを受け取った人もトランク1個で持ち帰った
以上のことより、明星先生は言われていた。

明星先生は自身の研究の経過を話された。
近所の病院のお医者さん(その人は元プログラマー)にお願いしながら自分が使いやすい、先生はわがままを通したデータベースを作ってもらった。→Literary Space、フィンランドで発表、先生曰く80%はポカーんとしていたらしい。

データベースを作るときは、大学では大きな黒板に紙をめいっぱいに張って考え、病院では床に撒き散らして考えていったらしい。やっぱりデジタル化もそれまでの工程はアナログ的なものが大きく介入するものなのだな。

【疑問点】
テキストだけではなく、原典を視覚的に、認知的に見ることで、心理学的な研究が可能なのか。
前回のGCOEセミナー(米国歴代大統領の就任演説にみる言語変異 ―多変量文体分析モデルによるテキストマイニング―)では電子化されたテキストを使用しての統計処理をしていたが、それとの組み合わせも可能か。

【感想】
GCOEセミナーは2回目であり、すでに雰囲気にはなれた。文学部の学部長がいた。私は文学部自治会執行委員をしており、顔を覚えられてはいないだろうが少しドキッとした。また、先日の国際シンポジウム「社会的弱者の観光を通じての自立と自律」におられた院生の方もいた。このセミナーに学部生がしかも1回生がいることに半ば「いいのかな?」といった違和感があった。しかし! そんなの気にしない! だって、誰でも参加自由だからだ。
で、今回のセミナーの感想である。この電子化の話はとても今後の参考になった。カフカの原点などが写真版カフカ全集などで、でたり、その草稿がかかれたノートもまた写真版で出るなんて、知らなかったよ。ちょっとした歴史的経緯も聞けたし、面白かった。
データベースの作成についても、その作られる経緯も聞けたのでよかった。
あ、ちなみに先生のお子さんは今、3歳だ。

【わからなかった単語】
編集文献学;Literary Space;モデリング;ブラッシュアウト;デジタルヒューマニティー;ハイパーテクスト文学;Textkritik